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2006年04月22日

絵本たちのおしゃべり

ある本屋さんでの出来事でした。

ある日、ある夜、だあれもいない、暗い絵本屋さんの片すみで何だか話し声が聞こえてきます。

じっとして聞いていると、なんと、絵本と絵本の話し声だったんです。

字のまったくない絵本が言いました。

「ねえ、近頃の子供って、可愛いらしさがなくなってきたみたい。ちょっぴりさみしい気がするわ」

すると、もう一つの絵本が

「そうね、まったく最近の子ときたら、乱暴で、なまいきで…」と、言っています。

「でも、私のとなりにいた本は、とっても可愛い子の所へ行ったわよ」と、くまのプーさんの絵本が言いました。

「中にはそんなに良い子もいるけれど、最近は、絵本をあまり読まない子がいるから、やっばりさみしいわよね」

「そうね。近頃では、子供より高校生のお姉さんや大人のお姉さんの所に行くことが多くなっているから」

「きっと、大人の人達の方が昔の良き時代を知っている人が多いのかもしれない。だから、子供より多く見るんじゃないのかしら」

「でも、やっぱり僕達は、子供達のためにこの世に生まれてきたのだから、子供に読んでもらいたいわねえ」

「そうね。やはり私もそう思うわ」

ちょうどその時、急に店のドアが開き、主人がツカツカと入って来ました。

『えーっと、たしか、うーん、ここら辺だったと思うが。ああ、あった、あった。これがないと私は家に帰れない…』と、ぶつぶつ言いながら出て行きました。

絵本達は、また話し始めました。

「わしはな、もう昔からこの部屋におるが、ぜんぜん売れないのじゃ。どこがいけないんじゃろか」

「おじさん、それはきっと、ここのご主人がいけないと思うわ。おじさんはとても良い本だと、みんな思ってるわ。それに尊敬してる。だけど、ご主人がおじさんをみがかず、ほこりのままにして、見えない所においておくからおじさんも私たちより早く年をとってしまうんだわ」

「そうよね。女性のご主人の時は、みんなきれいだったし、部屋も明るかった。だけど、今の男の人に変ってからは、部屋の暗くなったこと。私も古いけれど、こんなに変わるなんて思いもよらなかったわ」

「早く私達を、昔のきれいな時のようにしてほしいわ」

そんな事を話しているうちに、時間もすぎて、窓から朝日が登るのが見えてきました。

「さあ、みんな。これからまた子供達がやって来る。僕達は僕達で思いっきり輝こうじゃないか」

「ええ、そうね。本当に、みんながんばりましょうね」

やがて、この絵本屋もご主人が変り、みちがえる程に明るい部屋になって、やさしく子供達をむかえておりました。

オムニバス童話「大きなカバン」
<その1>本白い紙
<その2>本黒いこうもり傘
<その3>本大きなカバン
<その4>本マモル君と宝物
<その5>本絵本たちのおしゃべり
  

Posted by oroku at 11:12Comments(0)TrackBack(0)童話

2006年04月17日

マモル君と宝物

マモル君は、おかあさんにもらったクッキーの缶を、それはそれは大事にとっていました。

なぜって?それは、そのクッキーの缶の中には、マモル君にとって、とても大切な宝物が入っているからでした。

宝物といっても、他人から見ればただのガラクタにしかすぎないのですが、九才のマモル君にとっては、友達であり、兄弟であり、やっぱり宝物なんですから。

マモル君は毎日のように缶をあけ、ながめている物がありました。

それは、真っ赤なかきかた鉛筆でした。

マモル君がまだ小学校に入学したての頃、おかあさんがマモル君に買ってくれた鉛筆の最後の一本だったんです。

マモル君は、「もらった物は大切に使いなさい」と、おかあさんに言われたのを覚えていたのです。

だから最後の一本をとっておいたのでした。

四年たったある日、あのマモル君も十三才。

もう中学生になりました。

ふと、机のひきだしの一番奥にある、小さいころの宝物入れに使っていたクッキー缶を出してみました。

マモル君は、とてもなっかしくなって一つ一つ手にとってみていました。

赤いかきかた鉛筆を取り出した時、小学校に入った頃のことを恩い出し、やはり自分も幼なかったんだなっとなぜだかおかしくなって、一人で笑っていました。

そしてマモル君は、笑いながら、宝箱を元の所に大切にしまっておいたのでした。

オムニバス童話「大きなカバン」
<その1>本白い紙
<その2>本黒いこうもり傘
<その3>本大きなカバン
<その4>本マモル君と宝物
<その5>本絵本たちのおしゃべり
  

Posted by oroku at 22:50Comments(0)TrackBack(0)童話

2006年04月03日

大きなカバン

その村は、とっても田舎にあるけれど、みんな心のやさしい、親切な人々ばかりでした。

ある日、ボロボロの服を身につけた老人がこの村を通りすぎようとしていました。

村の人達は、この老人をとてもかわいそうな人だと思い、食べ物と飲み物を与えてあげたのです。

だけど、この老人は、今までの旅で色々だまされてきたのでみんなの好意を受けようとはせず、逆に、村の人達に迷惑をかけているのです。

それでも、この老人に親切にする家族がありました。

その家族は、村の小高い丘の上の小さな家に住んでいました。

そして、その小さな家に老人を招待して、心をなごませてあげようと思っていました。

老人は、この家族になにか悪さをしてやろうと思い、大きな灰色のカバンをひっさげて小さな家にやって来ました。

家族は、あたたかいレモンティーとお手製のチーズケーキをテーブルにおいて、老人を待っていました。

老人は、この家族の明るさにとてもまぶしさを感じていました。

老人の心は、一灰色で、だまされた事しか覚えてなかったので、この家族の明るさに、ねたむ心がおさえられなかったのでした。

気のよさそうなやさしいだんなさん、とってもほがらかで、やさしそうな奥さん、そして可愛いらしい女の子と、女の子の飼っているちょっぴりぬけていそうな犬が一匹の、ホントに可愛い家族で、老人をかこんでのささやかなパーティーがひらかれました。

老人はレモンティーやケーキを食べると、灰色の大きなカバンを持って何も言わずに出て行こうとしたのです。

家族は一度、とめたのです。

けれど、老人はニヤリと笑って、だんなさんの大切にしているサファィア入りのライターを持って出て行ってしまったのです。

さすがの家族も口をあんぐりあけたまま、あっけにとらわれて立っているだけでした。

でも、家族はおまわりさんにとどける前に、どうしてあんなことをしたのか考えていたのです。

と、急に女の子がさけびました。

「あの大きな灰色のカバンがいけないんだわ。きっとそうよ」

「ああ、もしかしたらそうかもしれない」と、だんなさんも言う。

「きっとあのカバンには、老人にとって、いやな思い出がいっぱい、いっばいつまっていて、それだからきっと灰色なんだろう。」と、話していました。

一方、こちらはあの老人。

サファィアのライターをながめながら

「わしは今まで不幸じゃった。あちらの町ではお金を取られ、こちらの村では悪党にだまされて、本当に悪夢をみているような人生だった。だから、わしもこのライターを取って、少しでもいい気分にひたりたいと思ったのじゃ。だけど、この村はちがっていた。他の町や村とはぜんぜんちがう。やさしくって、みんな親切だった。特にあの家族は、こんなわしのためにパーティーをひらいてくれた。わしはあんなに暖かい心ちよい所は初めてじゃった。なんだか悪いことをしてしまったようじゃ」

と、つぶやいていたのです。

次の日、老人はあの大きな灰色のカバンをひきずって、あの家族の小さな家にむかいました。

家族は老人を心よくむかえてあげました。

そして、老人は今までにあった出来事などを話してくれたのです。

家族は話を聞いたあと、とっても老人がかわいそうになって、一晩、とめてあげることになりました。

その夜、空から何かふわとした、ちょっぴり光る物が落ちてきました。

それはとても小さな天使だったのです。

その天使は、自分の持っていた虹色のシャボン玉を、大きな灰色のカバンにいっぱい、いっぱい、つめているのです。

とても不思議なことでした。

女の子は寝る前のお祈りで、神様にお願いしてたのでした。

「どうぞ、おじいさんのいやだった事を、早く忘れさせて下さい」と……。

その女の子の願いが、神様に聞き届けられたのでした。

次の朝、おじいさんは起きてみてびっくり。

なんと、昨日まで灰色だったカバンが、みごとにピンク色になって輝いていたのですから。

家族もおどろいていました。

が、女の子と犬は喜びました。

だって、女の子は犬と一緒に一生けん命お祈りをしたのですから。

やがて老人は、心のやさしい人になってこの村をあとに、新しい旅に出たのでした。

オムニバス童話「大きなカバン」
<その1>本白い紙
<その2>本黒いこうもり傘
<その3>本大きなカバン
<その4>本マモル君と宝物
<その5>本絵本たちのおしゃべり
  

Posted by oroku at 19:06Comments(1)TrackBack(0)童話

2006年03月29日

黒いこうもり傘

マサル君は、山形のおじいちゃんの家に、夏中ずっと遊びに行っていました。

ある日の午後、おじいちゃんは、こんな話を聞かせてくれました。

「なあ、マサル。おじいちゃんの大切にしている、あの黒いこうもり傘の話をまさるにした事があったかのう。」

「ううん。ねえ、どんなこと?」

「よし、よし、ではわしの話を聞かしてあげよう。」

おじいさんは、とっても昔の事を思い出すように、眼をとじて、こうもり傘をさすっていました。

「昔なぁ、まだわしがマサルのお父さんの年のころじやった。この傘を買ったんじゃよ。もうずっと昔だからなぁ。いくらだったかは忘れてしまったが…。その傘屋にのう、とっても親切な明るい母娘がおってなあ、そりゃあそこの辺じゃ、ちょっと有名な人でなあ。わしもそこの娘を一目見ようと思ってなあ、わざわざ一番高かった、このこうもり傘を買ったんじゃよ。そしたら、そこの娘がわしのことを、覚えておってくれとってなあ、少しずつ話し出したんじゃよ。」

「ねえ、おじいちゃん、その人、おばあちゃんのこと?」

「いいや、ばあさんではないんじゃ。」

「ふうん…。」

「それでなあ、その娘とわしは一緒になると思っておったんじゃが、その娘には、他に親の決めた人がおってなあ、まずいことに、その娘もそいつを好いておったのじゃった。」

「じゃあ、なぜおじいちゃんとお話したり、おつき合いしたりしたの?」

「さあ、それはわしにもわからん。じゃが二人がつき合っていた頃は、悪いことをしてるんじゃない、と思っていたから堂々としたもんじゃった。ある日、急にその娘がわしに会わなくなったんじゃ。なんでも、許婚者と三ヶ月後に結婚すると言うてなぁ。」

「それで、おじいちゃんはただ黙っていたの。」

「そりゃあ、初めは腹が立った。しかしなぁ、かといって未練がましくさわいだりしたら、それこそ大人気なくて、みっともないと思うてのう。きっばりとあきらめたんじゃ。」

「ふうん。そんなことがあったの。」

「それでも、やっぱり忘れられなくてのう、この傘をいつまでも、大切にして持っておるのじゃ。」

「それじゃ、おぱあちゃんは? いつ出てくるの?」

「その後に、わしがばあさんを見そめて、嫁にもろうたのじゃ。」

「おぱあちゃんは、この話を知ってるの? それともまだ話したことないの?」

「いいや、この傘はぱあさんの思い出もあるのでなあ、少しだけぱあさんにも話して聞かせたよ。」

「おぱあちゃんとの思い出って?」

「ぱあさんと出会ったのは、雨の日でなあ。わしがこの傘に入れてやって、駅から家までおくって行ったのじや。」

「ふうーん。」

「それから何度か、それも偶然に会うことができてのう。少しずっ、つき合い始めたんじゃ。」

「やっばり、会うのは雨の日が多かったのか…」

「いいや、そうでもなかったんじゃがのう、だけど、この傘は二人のためによう働いてくれたんじゃ。ばあさんと一緒になってからもなあ。」

「それじゃあ、やっぱり大切なこうもり傘なんだね。」

「そうじゃよ。この傘はわしの青春時代そのものと言っても言いすぎではないのじゃよ。マサルも、良い思い出を作って、またわしのように、孫に話して聞かせるようにするんじゃよ。わかったかい?」

「うん。ぼくも、おじいちゃんに負けないくらい、たくさん思い出を作るんだ。」

話し終えた後、おじいちゃんとマサル君のところに、おぱあちゃんが、よく冷えた西瓜を持って来てくれました。

オムニバス童話「大きなカバン」
<その1>本白い紙
<その2>本黒いこうもり傘
<その3>本大きなカバン
<その4>本マモル君と宝物
<その5>本絵本たちのおしゃべり  

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2006年03月24日

白い紙

僕は、真っ白な紙です。

僕の価値は、使ってくれる人によってずいぶん変ります。

僕の友達は、やはり紙だけど、とつても偉い画家の所で活躍している者もいれば、あるスーパーのチラシになっている奴もいます。

だけど僕は、スーパーや商店のチラシになると、とても不本意に思うのです。

だってそうでしよう、ただ何処のスーパーは安いからとか、あそこの商店は○○○が安くなっているとか、知らせるために使われる。

そして、用がすんだらクシャクシャにされて、ポイッと捨てられちゃう。

だから僕はチラシより、やっぱり画家や芸術家の所へ行きたいと思ってるんだ。

ある日、僕の行く所が決まった。

僕が不本意だと思っていた、スーパーのチラシだった。

なんとなさけない。

僕は逃げ出すために、あっちこっちを飛んだんだ。

だけど、いつも失敗してしまう。

とうとうスーパーのチラシになってしまった。

もう俗悪の極致だ。

もう、ひらきなおって、やけくそになっていた。

僕は、ある男の子の家に新聞と一緒において行かれた。

その子は、僕を見て叫んだんだ。

「ほら、お父ちゃん。○○スーパーでバーゲンやってる。」

でも、その子の父親は何も言わず、お酒を飲んでいたんだ。

この男の子は、僕の裏に何かを描き始めた。

僕は、すごく気になってたんだけど、なんせ僕の背中だから、とうてい見えるはずがない。

ただ、もうくすぐったいのをがまんして、事のなり行きをじっと聞いていた。

すると、その子の父親がなんだかおこっている様子で「こんなもの描きやがって、バカヤロー」と、叫んでいるのです。

何を描いたのかというと、その子の亡くなった母親の似顔絵だったのです。

父親は、その子の描いた似顔絵を見て、涙をうかべながらつぶやいていました。

「あいつもこんなに大きくなりやがって。なぁ、かあちゃん、オレもがんばらにゃあいけないなあ……」と。

僕は思います。今までの僕には、なんの値うちもありません。

だけど、この男の子のように、とってもすばらしい芸術家に出会ったんだから、それでいいと思うし、イジイジと少さな考えをしていた僕は、本当の紙としての値うちも何もなかったんだろうなって。

キラキラ 妻が高校のときに書いた
オムニバス童話「大きなカバン」
<その1>本白い紙
<その2>本黒いこうもり傘
<その3>本大きなカバン
<その4>本マモル君と宝物
<その5>本絵本たちのおしゃべり  

Posted by oroku at 21:14Comments(0)TrackBack(0)童話